第二の人生を考える

コロナが落ち着いたということもあって、起業する人が増えています。

「起業するのは若い人」というイメージを持つ人が多いようですが、実際にはシニア層の起業が増加しています。日本政策金融公庫によれば、「開業時の年齢は「40歳代」の割合が37.8%と最も高く、次いで「30歳代」が30.1%となっている。「29歳以下」は5.8%とほかの年齢層より少ない。」と分析しています。また、「開業時の平均年齢は43.7歳で、2020年度、2021年度と並んで過去最高となった。」としており、少子高齢化の影響もあるのか、起業する人の年齢は高年齢化が進んでいます。

 2023年時点では、起業者のうち60歳以上が占める割合は6.1%、50歳代では20.2%となっており、50歳以上の占める割合は26.3%。起業者の4人に1人は50歳以上ということになり、中高年層が奮起して起業している様子が伺えます。

 40代での起業者が多いのは、体力・気力ともに充実しており、残りの人生を考えた時に「チャレンジ」といった行動に起こすことがタイミング的にもマッチしていると言えるかもしれません。50代になると、体力はガクンと落ち、自分でも明らかに分かるほどに加齢の影響が出てきます。例えば、40代ならばまだ1日程度の徹夜は可能でしょうが、50代になると1週間は不調が続くことになります。健康診断を受ければどこかしらに不調が見つかり、自覚症状がない分、かなりショックを受けることになるのが50代でしょう。40代と50代では、肉体的にも精神的も大きな違いがある、そんなことを50代になると気付くのですが、それが実際に起業というステージにおいても数値に反映されているのは面白い事実です。

 50代になって起業するケースにはどのようなものがあるのでしょうか。もちろん、動機はさまざまですが、次のようなケースが多いようです。

・好きなことを仕事にしていきたい

・昔からの夢を実現したい

・自分の力を試してみたい

 子供をもうけるのが早かった場合には40代後半で既に子育てを終えている人もおり、そのような人からすると自分たちが生活できる程度の最低限の収入があれば十分という考え方で、起業に踏み切る人も多いです。会社の早期退職制度を利用して退職金を上乗せしてもらい、それを元手に独立するケースもあります。金銭面でガツガツしていない人が多いというのが50代以降の起業家に見られる特徴と言えます。(もっとも、ガツガツしていた方が起業してから上手く行くケースも多いのですが、一概にそうだともいえず、やはりバランスが重要であると言えそうです)

 40代はまだまだ生活費を稼ぐというモチベーションで起業する人が多い一方、50代(敢えてシニアという)のシニア層は自分のやりたいことを追い求めるという点で、ややモチベーションスタイルも異なるのかもしれません。

シニア起業家のメリット

人生経験を活かすことができるという点で、シニア起業はポイントが高いです。一見すると起業とは無関係と思っていたことが、成功要因として有効に機能することも少なくありません。

 人脈は最たる例でしょう。起業には相当なエネルギー(パワー)を必要とします。離婚したい人は日本中に本当にたくさんいるんでしょうけれど、実際に離婚する人は少ないです。なぜならば、離婚するためには本当に強いエネルギーが必要だからです。それほどまでのパワーを使って離婚しようとなるためには、相当に強いモチベーションが必要でしょう。

 起業は強いエネルギーが必要ですが、シニア層ならば今までの人生の歩みのなかでの人脈がそのエネルギーを支え、補完してくれることも珍しくありません。人脈というのは、仕事に繋がらなければ意味がないというように考えがちですが、一見すると仕事とは全く無縁のような人が起業というイベントには大きな支えになることがあります。飲み友達はビジネス上の付き合いには発展しないでしょうが、起業時に誰かを紹介してくれるかもしれません。昔からの友達はビジネスを初めてもお客さんにはならなくても、開店する際に大工仕事を手伝ってくれるかもしれません。

 起業時に必要な人が集まってくるという考え方もありますし、実際に困ったことが起こると必ず誰かが助けてくれることになるとはしても、それでも狭い世の中ですからいろいろな人とつながっているという人脈は本当に心強いと言えます。若い人に比べて体力は気力は少し弱くても、人脈という観点での人生経験はシニア起業家の方が上回っていることが多いのではないでしょうか。もちろん、若年起業家と競う必要もないのですが、仮に隣同士で飲食店を経営するならば、ライバルとして意識する必要は出てきます。その時に何がライバルよりも勝っているのかを考え、実行していくことが経営で求められる戦略であり、それが不適切であれば負ける、いわば撤退せざるを得ないような状況になることもあり得るわけですから、起業家といえどもプレイヤーとしてライバルの存在を常に考えておくことが重要であると言えます。

周りの反対

シニア層が起業する場合、ほとんどのケースで反対にあうようです。これは、若年層起業家でも同じですから、年齢や性別的なものとは関係ないかもしれません。

 

日本において、起業するというのは「特殊」であるということは昔も今も変わりません。これは、ほとんどの人が労働者であって経営者でないからです。つまり、労働者から見れば経営者になる、経営者になろうとする人は異質であり、頭の中で反発があるということでしょう。誰でも構いませんので、「今月で会社を辞めて起業しようと思う」と話してみれば分かりますが、まず反対されるでしょう。人格否定まではされないかもしれませんが、それに近いことをされ、その時点で周りの協力を得られずに挫折する人も多いです。その程度で諦めるならば起業などしない方が良いので、それはそれで構わないのですが、どんなに意志が強くても反対され続けると自分も参ってしまうことがあります。

反対されて辞めるぐらいならばもともと経営者としての資質がないということですが、反対されて逆に燃えるという人はそれで良いです。問題は、反対されても協力を取り付けたいという場合にはどうするか、ということですが、これはしっかりと自分の考えを持ち、それを愚直に行動に起こすということ以外に方法はなさそうです。例えば、若い女性が不倫に走る場合、周りからすれば明らかに止めたい気持ちになりますし、とてもそれを正当化することは難しく、男に単に遊ばれているという感覚しかありません。しかし、その女性が本気で愛した男性が単に家族持ちであって、すでに離婚する意志を決めており、将来をしっかりと考えて行動に起こしているとすれば、客観的には不倫という好ましくない状況であっても、女性が真剣に語る姿を見る限り、全く応援できないという人ばかりではないというのも事実でしょう。実際に、よくよく聞いてみると男性の妻は不貞を繰り替えしており、人間としても男性の妻として的確ではないというようなケースでは、むしろ二人が幸せになる方法としての不倫は一時的なものであって、いずれは幸せになれるという可能性はゼロではありません。実際にはやはり不倫関係に陥った当人同士が本質的に幸せになるというケースは少ないでしょうが、それを踏まえても友人や知人である女性を全く応援できない、と言うことにはならないこともあります。女性の本気度がどこまでなのかということにかかっています。

起業も同じで、反対する声が大きいのは「どうせ成功しない」という先入観であり、何も今更不安定な立ち位置に自分を置く必要もないという考えを持つ人が多いからです。それを踏まえて協力関係にまで高めていくためには、やはり起業希望者が本気になること。これは感情論だけではなく、客観的な本気度を表す証拠も必要です。具体的には、起業の計画書をしっかりと作り、頭に入れておくぐらいのことが必要でしょう。

いつから起業して、どのくらい売上があって、最初にどのくらい資金が必要なのか、そういった細かい質問に具体的かつ即答できるような状態になっていれば、反対している人も見方は大きく変わるはずです。完全なる理解者になってくれるかどうかは別として、何とか応援はしたいという意識に変わることはあるはずです。

特に大切なのは、「辞める線引きを明確にする」ことです。例えば、300万円の資金を元手に初めて上手く行かなかったらそこで辞める、1年間期限を定めて売上が安定しなかったら辞める、など、線引きをしっかりと示すこと。起業を意識している段階では、成功するというイメージは高いため、稼げるといった話を展開しがちになります。しかし、実際にはそんなに簡単に上手く行かないということは誰しも本能的に知っていますので、これができなかったら辞めるという線引きを示した方が納得しやすいというのがあるのです。

資金の確保

開業コストは年々下がっています。つまり、あまり資金をかけずに起業する人が増えているということです。これにはいくつか理由があります。

 1つは、コストをかけずに開業できるビジネスが増えたということがあります。インターネット系のビジネスは、パソコンを購入すればほかにはほとんど必要としません。自宅やカフェで仕事をすれば事務所を構える必要もありませんので、開業コストは限りなく少ない、自分のパソコンを使って起業すれば限りなくゼロに近いコストで起業できます。

 他には、コストを抑える方法が増えたということです。飲食店であれば、居抜き物件を使う方法があります。居抜き物件とは、前のラーメン店が営業を辞め、店内をそのままの状態で引き払ったという店舗のことを言います。一般的な賃貸契約の場合、退去時には原状回復が求められ、厨房機器やホールの備品は撤去、床や壁も壊してスケルトンにするという契約になります。しかし、原状回復には多額のお金がかかるため、そのままにして出ていってしまうケースがあります。あるいは、退去する前提で新しい借主を自分で見つけ、厨房設備等を安価で売り渡し(無料の場合もあります)新しい借主になってもらう、というようなケースもあります。このようなケースでは、昨日までラーメン屋を経営していた状態になっているため、看板を変え、食材を準備すればすぐにラーメン店を開業することも可能です。一からお店を作って厨房機器を準備して・・・という手間と時間にかかるコストがないため、開業コストは大きく下げることができます。

 シェアオフィスのようなものも同じです。長野市のシェアオフィス、レンタルオフィス、シェアスペースなども増えていますが、起業家同士でシェア(共有)するというスタイルが増えています。カフェで仕事をするというスタイルから、コワーキングスペース(さまざまな職業や会社の人が集まってコミュニケーションしながら仕事をするスタイル)を活用するというように変わってきています。インターネット上で商品を売買するようなビジネスであれば自宅でも問題ないでしょうが、お客さんと打ち合わせが必要となるようなビジネスであればオフィスが必須です。今までは自分だけでオフィスを借りる必要があり、毎月何十万円のコスト負担がありましたが、コワーキングスペースなら高くても月額3万円程度で済みます。長野市のシェアカットサロンも増えてきており、美容師も自分で店舗を持たずに起業できる時代になってきました。

 さらに、お客さんの変化、時代の変化もあります。今までは飲食店と言えば店舗がしっかりと構えられていて、そこにお客さんが食べに来るという流れが当然だったため、飲食店=店舗というイメージがありました。コロナウイルス感染症をきっかけに、車で飲食物を販売するキッチンカーが増え、店舗を構えずに車で販売できるようになりました。キッチンカーの種類にもよりますが、店舗を借りて飲食店を開業するよりも通常はコストを抑えることができます。また、デリバリーというスタイルも市民権を得ています。その結果、ゴーストキッチンというスタイルも見られるようになりました。ゴーストキッチンとは、店売りをしない、いわばデリバリーサービス専門の飲食店と考えてください。店売りをしないということは、ビルの上階や立地の悪い一軒家などでも調理さえできれば良いわけですから、賃料を抑えることができるようになります。客席(ホール)や看板なども必要ないため、店舗開業コストは限りなく小さいと言えます。

 時代の変化に伴って開業のコストは下がっています。だからといって、飲食店を開業する際にキッチンカーやゴーストキッチンが良い、ということではありません。飲食店自体をやりたいのであれば、コストが掛かったとしても自分なりの納得いく店舗を作るのが良いでしょう。しっかりと運営できれば、かけたコストを十分に回収できる収益を得ることもでき、結果的に大きなビジネスへと発展させていくことができるようになります。

 資金は、自分で準備するか、どこから持ってくるかの2つしかありません。自分で準備したお金は自己資金と言いますが、40代の人は家族に対する支出が多いため、十分な準備ができないかもしれません。子育てが終わった50代も今まで貯める余裕がなかったのですから、同じように資金不足に陥ることが多いです。

 起業時に資金が足りないという場合は、融資を検討することになります。特に、国の金融機関である日本政策金融公庫は、起業者に対して積極的に融資を行ってくれる傾向にあります。いくらまで借りられるのか、ということですが、起業希望者の属性によって大きく異なるものの、一般的には自己資金の2倍と言われています。自分で100万円用意したのであれば、その2倍の200万円程度を借りることができます。合わせて300万円が起業時に使える資金ということです。実際には、今あるお金を積み上げて考えるという思考を持つことは少なく、必要となる資金額を計算し、それに必要なお金をどのように準備するのかという考え方を採ることになります。

 例えば、キッチンカーで飲食店を開業する際に、必要なお金を積み上げていったら600万円必要という結論に至ったとします。この場合、自己資金で200万円は最低でも準備したいということになります。そして、不足している400万円を金融機関からの融資で賄うことになります。逆算して計算するということがポイントです。

 資金調達は、金融機関からの融資のほかに、家族や友人・知人から借りるという方法もあります。シニア起業の場合には選択肢としては親族から借りることですが、あまり現実的ではない(中高年齢層は身近な人への金銭貸し借りを嫌がる傾向にあるため)と言えます。また、起業を前提として補助金を利用する方法もあります。補助金というのは、返す必要のないお金のことで、種類にもよりますが数千万円ももらえるような補助金があります。ただし、全額がもらえるという補助金は少なく、一般的には半分か多くても3分の2程度となりますので、600万円のキッチンカー開業であれば補助金で充当できるのは300万円~400万となり、結局は200万円は自分で準備する必要があります。補助金は後払いが原則となりますので、キッチンカーで開業する際に600万円をいったん払い、その後に手続きをして補助金分が戻るというイメージです。したがって、一時的に600万円を準備する必要がありますので、補助金がもらえることになったからといって自分の負担分だけ準備すればよいということではありませんので注意が必要です。一時的にでも(通常は補助金が入金されるまでは時間がかかることが多く、半年程度は見て置いた方が無難です)半年程度は全額を支払える資金力が必要となりますので、自分で準備できない場合には金融機関につなぎ融資として借りることも必要です。つなぎ融資というのは、短期間だけ借りるというような性質のものです。加えて、補助金は全員がもらえるわけではなく、厳しい審査を通過する必要があります。補助金によって倍率は異なりますが、50%程度のものもあれば数パーセントという狭き門の補助金もあります。補助金は起業するタイミングで募集されていたりなかったりしますので、あまり補助金目当てで企業を検討すると振り回されてしまうことがありますので注意が必要です。

起業計画書

起業時の計画書を作らない人も多いですが、一般的には作った方が成功率は高まると言えます。

 起業時に融資を希望する場合や補助金の申請を行う場合には必須となります。それ以外でも、協力者を取り付ける際にも重宝します。なによりも、自分の考えを整理するためにも作った方が良いでしょう。起業計画書に決まったフォーマットは存在しませんので、自分の自由に作って問題ありません。ただし、融資などにも使うことを想定して、日本政策金融公庫が公開している事業計画書に落とし込むのがまずは良いでしょう。実際には日本政策金融公庫の計画書だけでは十分と言えず、追加で検討することや数字を整理する必要がありますが、まずはこれを整理しておけば大丈夫です。

 起業計画書が出来上がったら、何人かに見てもらうことをおすすめします。自分の都合の良い計画になってしまっていることが多いからです。たとえば、ラーメン店を開業するという計画を作った場合、ラーメン1杯の販売価格が1,200円と書かれていたとします。凄い特徴的なラーメンであれば分かりますが、一般的に1,200円と言う価格は高価格であり、理由がなければなかなか販売するのは大変でしょう。1,200で売れるという説得力ある説明が起業計画書の中に盛り込まれているか、盛り込まれていないようであれば質問されたときに的確に説明できるか、そういったことを繰り返すことで起業計画書が精査され、より良いものへと洗練されていくことになります。

 自分ではそのような意識がなくても、結果的に独りよがりの計画書になっているということは往々にしてありますので注意が必要です。ここら辺は自分だけでは分かりにくいので、コンサルタントなどに相談するのも手でしょう。起業などのアドバイスを行っている経済団体は結構多くあり、商工会議所・商工会という団体がいろいろと相談に乗ってくれます(無料です)。他にも、市役所なども起業に力を入れているので無料相談会を開催しているケースが多くあります。他にも、民間の経営コンサルタントに相談するのも良いです。税理士、司法書士、行政書士、中小企業診断士などの士業と言われる人たちが詳しいので、話をしてみると良いですが、有料のところも多いので事前に確認することが肝要です。

少し寝かしてみる

起業したい!と思ったときは自分の中では相当な盛り上がり状態です。その勢いで、インターネット等からさまざまな情報を集め、起業計画書を作って・・・というようにどんどん準備を進めていくことになります。

 既に仕事を辞めて、起業自体が完全に次の選択肢の中心にある場合にはそれで構いませんが、仕事を辞める予定でいろいろと準備しているという段階であれば、いったん立ち止まって本当にそれで良いのかを検討するのも一つです。

 起業の成功率は、いかに継続できたかという継続率によって表されることが多いですが、概ね3年後の継続率は半数程度と言われています。調査結果によっては、1年後に残るのは半数程度とも言われていますので、たった1年間で半数が淘汰される世界です。ラーメン店が開業して、しばらくは行列でなかなか食べるチャンスがなく、1年後に行ったら既に別のラーメン店に変わっていた、なんて経験を持つ人も多いのではないでしょうか。飲食店は特に難易度が高く、1年継続するだけで相当難しいのです。

 そうはいっても半分は継続で来ているわけですが、悲観的になる必要もないように思えます。人生の中では、はるかに低い数パーセントという試験を通過しながら生きてきた人も多く、50%ならば低い確率とは思えないとも捉えることもできるからです。ここで注目したのは、あくまでも継続している割合が50%程度であって、儲かっているかどうかは別ということです。

 起業すると分かりますが、会社やお店というのは赤字になってもつぶれるわけではありません。ニュース等でも、とんでもなく大きな赤字を出している大企業がたくさんいますが、すぐに倒産したりしませんね。お店は赤字だから倒産するのではなく、お金がなくなるから倒産するのです。ラーメン店においても、儲からないから潰れるわけではないのです。つまり、追加で融資を受けたり親族からお金を借りたりしてお店にどんどんお金を入れれば倒産することはありません。継続しているから儲かっているということにはならず、儲からない状態が継続しればいつか必ず倒産します。実際、そのような会社やお店は本当に多く、日本の会社の半数程度は税金を納めていないと言われていますので、半数程度の会社・お店は儲かっていないということです。このような状態になれば、自分の財産まで食いつぶしてすべてを失うという異なる可能性がありますから本当に注意が必要なのです。

このように、起業するというのは本当に過酷な状況に自分を追い込むわけで、それが故に周りも反対するわけです。嫌味で反対しているわけではなく、起業というのは本当に大変だということを理解し、それでも起業するのかということを本当に問うために自分のやりたいことを少し寝かしつつ、それでも本気と言う人は、起業するというのが良いのではないでしょか。

起業の魅力

なんだかんだいっても、シニア層の起業割合が増えているというのは、それだけ起業自体の魅力度が高いということでしょう。起業することで人生を豊かにするという考え方は誰も否定はしにくいと思います。ほとんどの人が経験できない起業を体験することだけでも貴重なことですし、起業することでしか分からないお金の苦労や人を育てることの難しさというのも存在すると言われています。

人生100年時代になったいま、より多くのことに挑戦したい、それがビジネスを通じて地域社会への貢献にリンクさせている人が多いというのもあるでしょう。40代や50代になると、「自分の人生このままでいいんだろうか?」と疑問に思うことが増えてきます。そして、家族の死や自分の病気などいろいろなことを通じて自分のエンディング、要するに「迫り来る死」をリアルに感じた時、起業というのもより真剣みをもって考えるようになるのではないかと思っています。

起業すると経営者になるわけで、経営者に定年はありません。ゆえに、起業自体に遅すぎるということはないでしょうか、それでもやっぱり早い方が有利であることも事実でしょう。人間は毎日確実に老いていくわけで、50代になればどんなに健康に見える人でも人間ドックをしてみれば異常が見つかるものです。若い時の勢いもどんどん薄れていき、良い意味で円熟な雰囲気が出てくるのですが、それが逆に足かせになることも珍しくありません。

どんなにお金持ちでも若さを買うことはできず、もっと早くやっておけばよかった、もっとたくさん挑戦しておけばよかった、といった呪文を唱える人が多くなるのは、振り返ってみた時の時間の大切さを象徴しているようにも思えます。

じっくり考えつつも決めたら一気に走るというのが起業に求められる経営者の特性なのかもしれません。その意味では、あんまり考えすぎて一歩が踏み出せないという状況になるのであれば、ポーンっと走り出すのも一つなのかもしれません。どちらにせよ、シニア起業は人生経験豊富というのが強みになるわけですから、自分で納得いく行動をするというのが大切になると言えそうです。